コート

ダブルブレステッドで丈の短いスポーティなコート。
イギリス海軍の艦上用コートとして
水兵や水夫などが、船上での防寒着として着用していたため、
厚手のウール地で作られることが多い。
ピーはオランダで織られていた厚手毛織物地のことで、
船上での強い風向きによって、前合わせを左右どちら合わせにもでき、
さらに大き目のリーファーカラー(※1)が付けられた、
船上での防風を意識した作りになっているのが特徴的。
両脇ポケットの上に、マフポケット(※)2がつき、生地にネイビーブルーの
メルトン地を使うのが本格的なもの。

また、船員が船のブリッジで見張り用にも着用していたことから、
「ウォッチ・コート」「ブリッジコート」の別名がある。

現在でも防寒用のショートコートとして、カジュアル向き、または
スーツなどの上にも着用するビジネス用コートとしても、用いられています。

(※1)ダブル６釦の厚手紡毛地で作られる、ボックス型の
リーファー・コートなどに見られる幅広でスポーティーな衿のこと。
リーファーは「海軍少尉候補生」のこと。
(※2）マフは毛皮製などの円筒状の、両端から手を
入れて暖をとるための小物。これを応用したポケットで、
腹部の中央に向かって両サイドから手が入るように、
縦に切り口をとったもの。別名ハンド・ウォーマー・ポケット

深めのラグラン袖でゆったりとしたシルエットを特徴とする
メンズコートの基本形のひとつで、上衿が巾広で大きく下衿が
小さいバルカラーが特徴的なスポーティーなコート。

素材はツイードやギャバジンなどの毛織物で作られることが多い
ですが、レインコートとしても用いられています。
バルマカーン（バルマカン）の名前は、スコットランドの
インバネスに近い地名から由来するもの。
インバネスは、日本名「とんび」とも言われるもので、
取り外しのできる長めのケープのついた男性用オーバーコート。

リブ編みのニットで作られた衿型ショウルカラー（へちま衿）を特徴とした
フィンガーチップレングスからスリークォーターレングス程度の着丈となる
カジュアルな防寒コート用ショートコート。
ドンキージャケットといったり、また同様のものにスパニッシュコートがあります。

デザインとしては昔からありましたが、ちょうど良いネーミングがなかったため
この新名称がつけられたもので、身頃や袖などは綿バーバリーなどの
素材で作られ、色はダスティな感じのモスグリーン、ベージュ、ブラウンが多いです。

ラグランスリーブ※、大型のポケットなど機能的、装飾的な面に工夫が凝らされた
ものも多く、包みボタン（共布釦）としたものや、レザーボタンをアクセントに
することもあります。
見るからに質実剛健な感じのするトラディショナル向きのコートで、
アイビーのスタイルとは相性が良いもの。

※衿ぐりから脇下にかけて斜めの切り替え線を入れ、
肩と一続きになった袖部分を身頃につけた袖。

春秋のシーズンに用いられる薄手のコート。
肌寒さの残る春先などに軽めの防寒用もしくは、ホコリ除けを
兼ねた使われ方をします。
いわゆる 「合いコート」であり、ごくオーソドックスな型の
ビジネス用のコート。
別称とされるスプリングコートは和製英語で、
これは春に着られるためのコートの意になりますが、最近では
トップコートと呼ぶ場合の方が多いです。

合繊や薄手のウール、独特の風合いやハイテク機能を備えるため、
混紡素材で作られることも多いもの。

ダッフルコートの別称。
トッグル（トグル）は、ダッフルコートの前合わせを止めるのに
使われる木や角、金属でできた浮き型の釦のことで、
ダッフルコートが、このトッグルを特徴としているため、
この名称がある。
ダッフルコートのフロント釦に、このトグルが使われるのは、
北欧の漁夫たちに愛用されていた名残ですが、
その後、第二次世界大戦時の英国海軍が軍用に採用してから、一般化し
現在ではそのスポーティーな感覚が好まれ、秋冬のカジュアルな
防寒着として、広く使われているコートの種類。
フード付きのショートコートで、厚手の起毛地で作られている
ことが多いです。

トー（綱で引く）を語源とする、コートの前開き（フロント）を、
ヒモなどを引いて止めるデザインをした、スポーティーなショートコートで、
冬季のスポーツ用に多く用いられるもの。

多くは、毛足が長い素材を用いた、スリークォーターレングスで
ダブルブレステッドの形をしており、このトーコートと似たものに、
トッグル（浮子型の木片）で前合わせを止めるダッフルコート、
トグルコート、ローデンコートがある。
ローデンコートは、オーストラリア西部のチロル地方で
作られる紡毛地を縮絨したローデンをその素材として仕立てられる
コートのこと。

オーバーコートの１種。
イギリスのチェスターフィールド伯爵が初めに着用したことに
由来するコートで、１９世紀後半に流行し現在なお人気のある伝統的コート。
チェスターフィールド・コートの本格的なものには、その上衿に
ビロードがかけられていることから、テーラードカラーにビロードを
用いたものを、チェスターフィールド・カラーと呼びます。

チェスターフィールドは、もっともドレッシーなコートとされており、
フォーマルスーツのアウターコート用に使われるほか、
おしゃれなタウンコートとしての用途も多いです。
多くは、シングルブレステッド、ノッチドカラーで、
前合わせがフライフロント仕立て（比翼仕立て）※とされています。
胸にはウエルトポケット（箱ポケット）、両脇にフラップポケットが付き、
全体のシルエットはウエストを絞った細身なもの。

時代とともにデザインにも変化が見られるようになり、
ダブルブレステッド４つボタン、ボタンスルー仕立て（打ち抜き仕立て）の
シングルブレステッド３つボタンなどデザインの変化したものあります。

※ジャケットやコートの打ち合わせの上前端が二重構造仕立ての
ボタンがけになっていて、着装したときに表からボタンが
見えないようになっているものをいう。

代表的な防寒コートのひとつで、
もともとは、ベルギーはアントワープ付近の都市「ダッフル」で織られている、
ダッフルクロース（ダッフル）※と呼ばれる厚手の毛織地で仕立てられた
北欧の漁夫用コートであったが、第二次世界大戦中、イギリス海軍が
北海警備の勤務用に採用したところから、急速に一般化しました。

フードが身頃からつながり、ダブルブレステッドの前合わせを、角や木、金属など
でできたトッグル（浮子形の木片）を細いロープで止めるデザインが
特徴となるコートのため、トグルコートの別名もあります。
また、現在ではダッフルコートの由来となったダッフルクロスが
使われることはあまりなく、代わりにメルトンなど厚手の生地が使われており、
前合わせも普通に釦止めとされることもあります。

比較的ショートレングスのコートで、スポーティーで機能的な
ところが人気で、カジュアル、ビジネスともに愛用者が多い
人気デザインのコート。

※両面起毛した厚地の粗い紡毛織物。
ダッフル・コートなどコートや毛布などが主用途。

ステンカラーの衿腰を低めとした衿（セミステンカラー）
を特徴としたコートの総称。
現在着用されているビジネス用オーバーコートの衿型では、
ステンカラーコートよりも多く目にするコートの衿型。

ステンカラーは、衿の上端を開けても閉じても着られるコンバーチブルカラーや、
シャツ衿のように、衿腰で立ち前身に向かって直線的に折り返る
スタンド・アンド・フォール・カラーの一種とされており、
セミステンカラーは、同様のデザインをしていますが、
そのステンカラーの衿腰を低くした衿型となります。

セミステンカラーコートのデザインは、ステンカラーコート
のデザインと変るところはなく、胸ポケットなし、腰ポケットに
斜め切りとした箱ポケット、センターベント、前開きは
防寒・防風機能を高める比翼仕立て（フライフロント）のほか、
打ち抜き釦止め。
ビジネス用コートにはごくオーソドックスなデザインが取り入れられます。

防水用コートの１種。
着丈の長いゆったりとしたレインコートのことで、別名オイルスリッカー。
以前は黄色のゴム引きの布地やラッカークロスで作られた
大型のコートを言っていましたが、現在では一般にラッカー・クロス※、
エナメル・クロスで作ったものをさしている。
水夫や漁師、子供などが防水帽とセットで着用する、
簡単に言ってしまえば、「立衿型の雨合羽」のこと。

※漆のような光沢を加工でほどこした布のこと。
ナイロンやテトロンの目のつんだ織物をコーティング加工する。
エナメルのような光沢、柔らかさ、撥水効果などの特徴がある。
レインウェア、ブルゾンに用いられる。ラッカーは漆のこと。

夏季をのぞいた春秋冬の３シーズンを通して着られるような
コートのことで、防寒用に着用される冬用のオーバーコートとは
違い、基本的に薄手素材で作られています。
春秋にはホコリよけのためのダスターコートやレインコートとして
着用する薄手コートの内側に、取り外し可能で保温性のあるライニング（裏地）を付け、
温度調節をはかるようにされているもの。

スリーシーズン・コートはライニングが付けられていることから
ライナーコート、オールシーズン・コートと同じ意味に用いられます。

スパニッシュカラー（ニットでタブ付きの大きめな
ショールカラー）を特徴とした防寒用のショートコートのことで、多くは
フィンガーチップレングスやスリークォーターレングスとなるもの。
ドンキーコートやドンキージャケットと同じ。

スポーティなカジュアルコートの１種で、コーデュロイなど
のコットン地が素材として用いられることが多く、ダスティーな色使いの
表生地で作られるアイテムは、簡素でトラッドなアイビーのスタイルとの
相性がとても良い。

くるみ釦（共布釦）や革釦をアクセントとしたり、使いやすく
また大きなパッチポケットがつけられたりなど、デザインにも
工夫がされています。

ステンカラーは、第一釦を外しても掛けても着ることができる
コンバーチブルカラー※を特徴としたコートの総称。
衿腰がやや高めで首に沿って立ち上がり、低めの開き止まり・衿先に
向かって直線的に折り返った衿型をしており、この後ろ側の衿腰が
低めなものをセミステンカラーといいます。

ステンカラーコートの多くはラグランスリーブ、
フライフロント（比翼仕立て）で、ニーレングスタイプ（膝丈）。
男性用のビジネスコートとして最も多く見ることができるデザイン。

このステンカラーコートの衿型（ステンカラー）は、ただしくは
スタンドフォールカラー、スタンド・アンド・フォール・カラー、
ターンオーバーカラーなどと呼ばれ、「ステンカラー」は和製英語。
語源は、「スタンド」や、１４～１７世紀のフランスで使われた
「スティアン・コル」に形が似ているため、人台（洋裁店などに
見られる首なしの半身像）をスタン、ステンと表現するのに似ているなど。

※コンバーチブルは＜交換できる＞などの意味で、
コンバーチブルカラーは衿の上端を閉じても開けても着られる、
２通りに変化する衿のこと。
ハマ・カラー、ステン・カラーなどが代表的。

短い丈のコートの総称。
フィンガーチップレングスより短い着丈のコートで、フィンガーチップ
レングスは、コートやジャケット着用時に、自然に左右の腕を下ろした際、
指先（フィンガーチップ）に、コート丈などが触れる程度の丈長さのものをいいます。
フィンガーチップレングスとほぼ同じ程度着丈とされるスリークォーターレングス
（ヒップともものほぼ中間ぐらいの長さ）や、ヒップ丈のコートもショートコートに含まれます。

素材や色柄使い、シルエットなどカジュアル感の高いコートとして
用いられ、ハーフコート（半コート）と同義。

中世の騎士が着用したコートというほどの意味があり、
和訳すると「陣羽織」ということになるのですが、
主には、１３～１５世紀ごろの西欧の男女が着用した、
フランス語でいうシュルコのこと。
このシュルコを英語でいったものがサーコートとなります。

シュルコはコットといわれるチュニック型の衣服の上に
着用されていた表着のこと。

現在、サーコートというと、着丈が長めの「ロングジャンパー」
のことをさします。
ジャンパーとショートコートの中間に位置する、カジュアル感覚
で着用するデザインのコート。

ジャケットをも含めた着丈の長いアウターウエアのを総称するもので、
１７世紀ごろより用いられはじめ、男子の衣服として定着することになりました。
一般には防寒用のオーバーコート、ダスターコート、
レインコートなど衣服の一番外側にに着られる袖付きの
外套全般のことをさしますが、モーニングコート、ライディングコート、
ブレザーコートなど、ジャケット類に属するものにもこの名称が付けられることがあります。

コートには種類やデザインのバリエーションがとても豊富で、
その特徴的なデザインから固有の名前で呼ばれるものも多く、
最も多く使われている防寒用コートのデザインとなる
チェスターフィールドやステンカラーコートのほか、
トレンチコート、ピーコート、ダッフルコート、ブリティッシュ・ウォーム
などは有名。

歴史的には、コートは男子服の上着類全般をさすものになりますが、
現在では、コート、ジャケットは概して丈の長さで区分されています。

毛皮裏を付けた重々しい感じのコートの総称。
１９７０年代に流行した大きめサイズの服をあえて着用し、その着こなしを
楽しむファッションスタイルを、ビッグルックというのですが、
このビッグルック全盛のおり、注目されたのがグレートコート。
タックやギャザーを多めにとり、だぶだぶしたシルエットが特徴的なスタイル。

キルティング（キルト、２枚の布の間に木綿、または合繊の綿を
はさんでステッチ止めをした素材）で作られた防寒用コートの総称。

キルティングは、保温を目的とする防寒用のほか、防護、装飾のために
用いられ、イングリッシュ・キルティング、アップリケ・キルティング、
パッチワーク・キルティングなどの種類があります。
古くは７世紀ごろイスラム人の鎧の内着として使われていた
記録があり、その後十字軍の遠征によってヨーロッパに
広まったとされています。

キルティングコートには幅広い用途があり、スキーウエアに
使われる派手な色のものから、冬期の現場作業に使われる丈の短いものまで。
キルティングはコート、ジャンパーなど衣服のほか、バッグ、布団などにも利用されています。

比較的新しい時期に名づけられたスポーティなコート。
戦場カメラマン 渡部陽一さんがメディアに多く登場した時期には、
このページのアクセスが急に増え、カメラマンコートへの関心が急に
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デザインや素材に決まった特徴が定められているというのではありませんが、
屋外での作業が多いカメラマンのための機能的な防寒コート
としての名前。
カメラマンコートが作られる素材はコットンギャバジン、コットンスエード、
近年では合成繊維など軽くてもがっちりした生地を使い防水、防寒用に備えているもの
が多く、丈は歩きやすさ、動きやすさを考えてスリークォーターレングス。
ポケットも持ち物がたくさん入るように大きくかつ機能的に作られており、
多くは両胸にタテ型のフラップポケット（フタ付きポケット）、
サイドポケット（腰ポケット）に同じく胸と同じものをつけるか
大型のパッチアンドフラップポケット（フタ付きアウトポケット）としている。
内側をジッパーフロントにしたフライフロントの前あわせで、防寒・防風効果を高め、
ドットボタン※をアクセントとしています。
衿は種類も変化も多いが、フード付きのものが主。

※丈夫な金属製のスナップのこと。
水玉のように見えるところから、このように呼ばれる。

ガーズマンとはここでは「イギリス陸軍の衛兵」のことをいう。
彼ら英国の「近衛歩兵第一連隊」が着用していた肉厚のウール地を用いて
作られたオーバーコートのことで、アルスターカラー、ダブルブレステッド、
共生地の長いベルト付きを特徴としたもの。
軍服だけに機能性が重視され、一般のダブルブレステッド型のコートに比べて
動きやすいように裾の周りが大きく、バックのセンターに内ヒダ
（インバーテッドプリーツ）※がとられ、大型の衿が付けられている。
”ガーズコート”の別称もある。

※衣服や布などにつけられた細長い折り目のこと。英語のプリーツにあたる