ダブルのコート
リーファー
厚手紡毛地でピーコートのように風向きにより左右の打ち合いを替えることができる
ように仕立てられたダブルブレステッド6つボタンの短い丈の
防寒用ショートコート。ボックス型のシルエットをしていることから
ボックスコートの一種とされており、
リーファーコートに見られる、幅広のダブル衿のことを、
特にリーファーカラーと呼びます。
リーファーとは、本来「船の帆を扱う人」という意味があるのですが、
これを「海軍少尉候補生」が任務とすることから、俗称となったもので、
正式にはミッドシップマンといい、
彼らの制服をリーファージャケットと呼んでいます。
またリーファーはウールで作られた長い長方形のマフラーをいうこともあります。
※ボックス型シルエットのコート。肩はパッドで四角く強調し、
多くがセット・イン・スリーブで、ストレートな身頃でウエストは絞らない。
身近めの丈のものが多い。
ポロコート
ポロ競技者が待ち時間に着用したり観戦用に使われたことから、この名称がある。
色はキャメルが基本色で、待ち時間用ということから、ウェイト・コートの
別名があります。
厚手のウールコートで作られたスポーティな、ダブルブレステッド、
6つボタンを特徴とするコート。衿はゆったりとした
ピークドラペル若しくはアルスターカラーで背バンド付き、両脇に大型の
パッチアンドフラップポケット※、袖口には巾広のカフス(折り返し)が付いている。
もともとの呼び名はウェイト・コートでしたが、ブルックブラザースが
このポロコートの名前で売り出したことから、こちらの名前の
ほうが有名になったもの。
コート丈はスリークォーターレングス、袖はセットインスリーブ若しくは、
セミラグランスリーブ、全体にステッチが付けられているのも大きな特徴となっています。
トラディショナルモデルの代表的なコート。
※はりつけポケットで、雨ぶたのついたポケットのこと。
エンベロープ・ポケットに同じ。
ブリティッシュウォーム
第一次世界大戦にイギリスの陸海軍士官が着用したダブルブレステッドの
厚手のウールでできた防寒用コートで、衿型はピークドラペルとなっているもの。
肩章(エポーレット)が付き、コート丈は膝丈かそれよりやや短めの丈。
第一次世界大戦後に、一般にも普及したコートデザイン。
ポロコートを軍服に採用したもので、ブリティッシュウォーマー、
ブリティッシュウォームコートという場合もあります。
また、ポロコートの別称ともなっています。
ハドソンベイ・コート
外観・ディテールともピーコートに良く似ており、
ハドソンベイコートは、カナダ版ピーコートということになります。
厚手の紡毛地でできたダブルブレステッド6つボタンで
ベルト付きの防寒用アウターコート。
ハドソン湾(ベイ)で着用されていた艦上用コート
であるところが、名前の由来。
コートの表生地には、白またはオフホワイトが用いられ、
ベルト下の部分や袖口に2本または3本のカラフルな横縞が入れられるのが特徴。
※水兵や船員の着る厚手ウール製のダブルの打合せのショート・コートで、
風向きによって左右どちらも上前にすることができるのも。
手を暖めるよう縦に口を切ったハンド・ウォーマー・ポケットが特徴で、
衿はノッチド・ラペル、後ろにベンツがつている。色はネイビーブルーが基本。
パイロットコート、ウォッチコート、キャバンなどともいう
トレンチコート
ダブルブレステッドでベルト付きとなっているのが大きな特徴となる、
肩にエポーレット(肩章)、背中のケープ型のヨーク、ガンパッチ(※1)、
チンウォーマー(衿もとのカバー)、胸のストームストラップ、
袖口ストラップなどディテールデザインは戦闘服の機能性を元とし
作られた防水素材製のコート。
第一次世界大戦中、イギリス陸軍が塹壕(トレンチ)戦用に開発した
起源はあまりにも有名。生地は防水加工を利点とするバーバリーを
使ったものが本物だが、近頃ではコットンタイプのギャバジンや
ツイルに加えて、ウールのそれも多用され、色柄的にも変化が多い。
「完成された機能の極限がもっとも美しい」とは、このコートに最適な言葉である。
キングオブメンズコートの異名さえ付けられる。
もっとも代表的な男のコートである。
(※1)ジャケットの肩から胸にかけてつけられた当て布、当て革のことで、
片側のみにつく。ガンは<銃>、パッチは<つぎ布>の意。
元来、猟銃を支えるために補強用として作られたことからの呼称。
アルスターコート
1860年代に男性用のコートとして登場し、
トレンチコートの原型ともされた、ベルト付き
で厚手の丈の長いオーバーコート。
打ち合いシングル、ダブル両方のデザインがあり、初期のものは、
取り外しのできるフードやケープがついていました。
本格的なアルスターコートは、アルスターと呼ばれる
厚手のコート地が使われ、このコートの衿型を、
特にアルスターカラーといい、他にも多く使われている。
アルスターカラーは、打ち合いの深いダブルの衿型で、衿巾の広い
テーラードカラーのこと。
アルスターコートの名称の由来は、このアルスターと呼ばれるコート地が、
北アイルランドのアルスター地方産ウール素材であることによります。