フォーマル小物
スターチド・ボザム
男性用の正礼装、フォーマルスーツの中でも
一番格式の高い燕尾服(テールコート)用の
ドレスシャツの胸(ボザム)部分を共生地を
重ねるなどしてかたく糊付けして作られた
胸当てのこと。
一般に「イカ胸」と言われるシャツの胸部分の
作り方で、別名「スティッフ・ボザム」。
胸部分をプリーツ仕立てで作るプリーテッド・
ボザムのことをいう場合もあります。
このスターチド・ボザムで作られたシャツは
「ディッキーフロントシャツ」「イカ胸シャツ」
と呼ばれています。
モーニングバンド
フォーマルスーツの腕に巻かれる喪章のこと。
また、チェスターフィールドの正式なものに付く黒いベルベットの上衿はモーニングカラー、チェスターフィールド・カラーと呼ばれ、同コートの代名詞とされており、このほか、フライフロント(比翼仕立て)のジャケットなどに用いられることもあるデザイン。
これはフランス革命当時、ギロチン台に消えていくフランス貴族たちに哀悼の意を表す意味でイギリス人たちが用いたことに始まる。
チェスターフィールド・コートは、衿型がノッチラペル、胸に箱ポケット(ウエルトポケット)、腰にフラップポケットがデザインされたコートで、シングルの打ち合いに比翼仕立てや釦穴の開けられた打ち抜きで仕立てられたものが多いが、打ち合いダブルとなるものもある。
イギリスのチェスターフィールド伯爵が初めに着用されたことに由来するコート。
ディッキーフロント
烏賊胸(いかむね)シャツのこと。シャツの胸部分(ボザム)に胸当てが付けられたスタイルをいう。
男性用夜の正礼装・燕尾服(イブニングコート・テイルコート)専用の胸当て付きドレスシャツで、シャツの衿はウィングカラー。
硬く糊付けされた胸当てが、烏賊(いか)のようであることから、烏賊胸シャツと呼ばれる。
クラシックなフォーマルスーツ、礼装用のドレスシャツに用いられる。
また、燕尾服に合わせられるディッキーフロントの衿型・ウィングカラーは、衿先が小さく三角形に折り返った衿型のことで、別名シングルカラー、ポークカラー、フランスではコルカッセと呼ばれています。
セーラー・カラー
水平のユニフォーム、また女学生のセーラー服に見られる衿型のこと。セーラーカラーの後ろは四角、前はVネックになっている。
伊達に後ろ衿が大きくなっているわけではなく、艦上勤務の水平(セーラー)が強風から顔を守るため、また遠くからの伝令がよく聞こえるように衿を立てるという機能がある。
1900年ごろから着用されるようになった英米の水兵服で、その後子供服のデザインとして取り入れられ、日本では女学生の制服の衿型として用いられていることから、若々しく清潔なイメージのする衿型として根強い人気。
セーラーカラーのほか、海軍水平(セーラー)が着用していたものに由来する現在ファッションには、セーラーパンツ、セーラースカーフのほかホワイトハットなどとも呼ばれる水平帽、セーラーハットなどがある。
スタッド
飾り鋲の意味。取り外しのできる色付きの飾り留めボタン。 また取り外しのできるボタン飾り。
スタッドイアリングを略した、ピアスのことをいうこともある。
フォーマルスーツ用として、タキシードやモーニングコートなどに用いるドレスシャツに使われ、このドレスシャツは、釦を付けないタイプのもの。スダッドを釦の代わりにすることで、アクセサリー兼用の釦止めとする。
スタッドはスタッズ、スタッズボタンなどといわれ、カフリンクスとセットとなったものが多く、紳士の正装用フォーマルを飾るアクセサリーとして欠かせないものとなっている。
また、スタッドピンは、尖ったピンに飾りのついたもので、タイタックやラペルピンとして用いられ、タイニーピン、スピラと呼ばれる。
カラースリップ
フロックコートを原型とするモーニングの語源は「グッドモーニング」だそうです。昼間に着る正礼装であるということからも、うなずけるネーミング。
カラースリップはいわゆる白衿のことで、モーニングコートのベストの衿につけられる、白い足し衿のこと。一般には、慶事にはアイボリーやグレーのベストを合わせ、弔事にはモーニングと共生地の黒色の生地のベストを着用することになるのですが、白衿は黒地のベストに白い衿を付けたすことで慶事の場合にのみ用いることになります。
この白衿をベストに付け足して着用するという着方は、日本のフォーマルスーツのシーンのみに見られるもので、モーニングコートだけでなく、ブラックスーツの三つ揃えベストに、着脱式の白衿というのもたまに見かけます。日本独自の西洋フォーマルスーツの進化系というところだと思うのですが、現在ではあまり見かけることがありません。
カマーバンド
タキシードなど、セミフォーマルに用いられる、腹巻状、巾広の布ベルト。 ベストの役割を果たしているフォーマルスーツの小物。
タキシードの衿に使われる拝絹と共地で作られ、ヒダが付いているが、ヒダ数は別に決まっておらず、色は黒が中心。
もともとはサッシュ(腹帯)、中近東で見られる飾り帯にヒントを得て作られたベストがわりの帯であり、ヒンディ語で「腰ベルト」を意味し、1893年に生まれたものといわれる。
また、これを真似てベスト型にしたものがあり、”カマーベスト”と呼ばれている。このカマーベストは、カマーバンドのフロント部分をベストの形にカットして作り、釦止めとしたもので、夏のタキシードに合わせて用いることが多い。
※拝絹地
礼服の縁につける絹地。燕尾服やタキシードなど男子の礼装用スーツのラペルに張る黒絹布をいう。フェーシング・シルクともいう。
エナメル
光沢のあるエナメル革を使って作られたもので、フォーマルスーツ用の靴。エナメルシューズ。パーティー用衣装の足元を華やかに飾ってくれます。スリッポンタイプの靴に多く使われており、エナメル革はパテントレザーともいう。
エナメル革は、主に牛、馬、ヤギなどの革に、クロムなめしをし、現在ではウレタン樹脂塗料などを何回も重ね塗りすることで光沢感を出した革のことで、弾力性と耐水性も兼ね備えたもの。
エナメル革のなめしに用いられるクロムなめしは、今日一般的に用いられる革のなめし方法。塩基性硫酸クロムで革をなめす方法で、なめし時間が短時間で済むため経済性にすぐれている。これに対し、昔からの革なめしは植物性のタンニンなめし。