ハット
ホンブルグ・ハット
1860年頃、ドイツのホンブルク地方で流行っていた
帽子型を、当時のプリンス・オブ・ウェールズ(のちの
エドワード7世)が、イギリスに持ち帰ったことで、
ヨーロッパの貴族社会に普及したもの。
巾の狭いブリムの縁を絹テープで飾り、全体を上向きに
巻き上げた感じのシルエット、クラウンの中央部を
縦にへこませたクリースの入った中折れ帽で、
シルクハットに次ぐドレッシーな帽子とされています。
本来は堅いフエルトで作られていましたが、現在では
柔らかいフエルト製のものが主流で、別名にホンブルク、
ソフト・ホンブルク。
※帽子のつばや縁のこと。クラウン(山)にとりつける。
デザインによりさまざまな形があり、幅は広いものから
狭いもの、水平、下向き、巻き上がったものなど、
その形によって、いろいろな帽子の呼称にわかれる。
また、ブリムの部分により、縁の部分をエッジ、
クラウンと接する部分をサイズ元、ブリムの内側
の部分をフェイシングという
フロッピーハット
フロッピーには「ばたばたはためく」といった意味がある
ことから、極端に広いブリム(フロッピーブリム)をもつ
ために、このような印象のある帽子のことを、
フロッピーハットといいます。
黒地のフエルト地の1枚仕立てで作られるために、
キャップに分類されてもいいのですが、広いつばで
顔を隠すようにかぶる「ガルボハット」とその形が
似ているためにこのように呼ばれます。
ドレッシーな女性の装い、ロングルックによく
合わせてかぶられます。
また、このフロッピーハットのブリムを少し
短くし、デニムやキャンバス地を使って、
接ぎ入りで作られる帽子が、「チューリップハット」
になります。
※フエルトとは?
ノイル(くず毛)や反毛(再製羊毛)に蒸気熱、
圧力を加えて縮絨(しゅくじゅう)し、布状にしたもの。
保温力が高く、衝撃を緩和、音響を吸収する性質がある。
帽子、スリッパ、敷物、カバン、手芸材料、衣服に使われる。
チロリアン・ハット
チロル地方の民族衣装、チロリアン・コスチュームには
欠かせない帽子型で、先細りし、ややとがった形をしたクラウン、
狭めのブリムの前を下げ、後ろ側を折り返してかぶられます。
柔らかく軽い起毛仕上げのフエルトで作られている
ことが多く、ハットバンドに飾り紐をつけたり、
鳥の羽を付けたりして飾られているものもあります。
登山用帽子としてもおなじみな、スポーティーな
服装によく合う帽子型です。
※チロリアン・コスチューム
オーストリア西部と、北イタリアにかけての地方、
アルプス山岳地帯のチロルで着られる。
男性は、刺繍を施したズボン吊りがついたラシャ製か
革の半ズボンに短いジャケット。女性は、ブラウスの
上にひも締めの胴衣をつけ、ゆったりしたギャザー・
スカートの上にエプロンをつける。独特のチロリアン・ハットをかぶる。
ソフトハット
柔らかいフエルトで作られた、中折れ帽の
ことで、ソフト・フエルトハットの略称、
日本ではソフト帽と呼ばれています。
クラウンのてっぺん部分にタテに折れ目が
入っているのが特徴的な帽子型で、
ビジネススーツにもっとも多く合わせられる
帽子となっています。
イギリスでは「ホンブルグ」、また、アメリカでは、
ブリムの縁の上げ下げが容易なことから「スナップ・
ブリムハット」、フランスで上演された劇中の
ヒロインがかぶっていたことから「フェドーラ」
の名前でも呼ばれています。
※ノイル(くず毛)や反毛(再製羊毛)に蒸気熱、
圧力を加えて縮絨(しゅくじゅう)し、布状にしたもの。
保温力が高く、衝撃を緩和、音響を吸収する性質がある。
帽子、スリッパ、敷物、カバン、手芸材料、衣服に使われる。
センター・クリース
クラウンの真ん中にクリース(折り目・くぼみ)を
付けてかぶるようデザインされていることから、
つけられた名前で、中折れ帽のこと。
クラウンが高く、ブリムが狭めの帽子デザイン。
柔らかなフエルトを使って作られることが多いため、
日本では「ソフト帽」と呼ばれており、ソフト・
フエルトハット、ソフト・ホンブルグハット、
フェドーラは同意。
ホンブルグハットは、堅いフエルトで作られることが
多いため、柔らかい素材を使って作られたソフトハットと
区別されます。
シルクハット
燕尾服やモーニングコートなど正礼装時にかぶられる
帽子のことで、円筒形でてっぺんが平らなクラウン、
狭めのブリムの両端が少し巻き上がって作られているのが
特徴的な帽子デザインとなっています。
シルクハットは17世紀半ばごろに流行したビーバーハット※
に使われていたビーバーの毛皮が激減したために、
シルク地が使われるようになったためのもので、
オペラハット、トップハット、ハイハットなどの
別名で呼ばれることがあります。
「トッパー」はシルクハットの俗称で、キツネ狩りの
際にかぶられるシルクハットは「ハンティングトッパー」
と呼ばれています。
※ビーバーの毛皮で作られた山高帽の一種。
14世紀から男女ともにかぶっていたが、この毛皮が高級なため、
後にフェルトやウサギの毛を使うようになった。
17世紀、ビーバーに似せたシルク製の男性用の山高帽が誕生し、
それが19世紀になり、シルク・ハット、トップ・ハットと呼ばれるようになった。
カウボーイ・ハット
アメリカ西部のカウボーイ(牧童)が、日除けや
雨除けのために愛用する、高いクラウン※の上部分に
折り目が付けられ、広めのブリム(つば)を巻き上げて
かぶるフエルト製の帽子のこと。
カウボーイスタイルをモチーフにしたウエスタンルック
には必須のアイテムで、ランチコートやウエスタンブーツ
などといっしょに用いられます。
ウエスタンハット、テンガロンハットは同意。
よく似た帽子型にガウチョハットがあります。
※ラテン語のコロナが転化した言葉。古来より頭部を
飾るものを称した。今は、帽子の部分名称。帽子の頭部を
おおう山の部分のこと。つばの部分はブリムという。
ちなみに、先端部はトップ。頭回りはヘッド・サイズとよばれる。
クラウンはハットにのみ使われる呼称で、キャップにはつかわない。
また、帽子の製作に使う木型をクラウン木型という。
また、古くは西洋の王冠のこともクラウンと呼んだ。