縫製用語
グレーディング
バストやウエストサイズを基本に作られている、
マスターパターン(基本型紙)を部分的に大きくしたり、
小さくするなどして、いろいろなサイズや、体型の
お客様の身体に合ったジャケットやパンツを
仕立てるために、型紙を調整すること。
パターンオーダーでスーツを仕立てる際に、
基本体型はAB5なのだが、肩巾寸法をもう少し
欲しいために、肩巾のみ調整し大きめにグレーディング
するなど。
また、このグレーディングはオーダースーツの
裁断師のみが行う型紙調整のほか、既製スーツの
サイズ種類を数多く展開するために、パタンナーが
行う型紙調整のこともいいます。
このスーツパターンを調整(グレーディング)する
人のことを「グレーダー」と呼びますが、以前は手作業で
行われていましたが、近年は、CADを利用して
サイズ調整することも多くなっています。
柄合わせ
スーツを仕立てる際に「柄合わせ」が必要になるのは、
その生地柄が、チェックや比較的太巾のストライプ柄
の場合になります。
仕立てる生地を裁断する時に、柄が崩れないように
(つながるように)、ジャケットやスラックスの
左右の身頃や、身頃と袖、前身と後身、ジャケットの
腰ポケットフタやパッチポケットの模様を合わせます。
通常この生地の柄合わせをするためには、無地の生地を
裁断するより、生地の長さが必要になるため、
注文者体型により、着分生地での裁断が難しい場合や、
ベスト付き不可、または要尺が必要になるデザインを
変更など、注意が必要な場合があります。
また、近頃増えてきた、生地をお持込(先地)いただき、
仕立てる場合には、大柄のチェック柄の場合には、
生地を長めにご用意いただく必要があります。
ワタリ巾
ワタリ巾は、渡り巾などとも書きます。
スラックスを平台などに置き、クロッチ部分を水平に採寸した寸法で、
人体のヒップまわり寸法に大きく左右される寸法。
ノータックパンツよりワンタックパンツ、そしてツータックパンツの
ほうが、タック量の分だけ、ワタリ巾の太いパンツが作られます。
既製のスラックスでは、ウエストが太ければワタリ巾も広いという
ことになりますが、オーダーのスラックスでは、このワタリ巾寸法
を指定することができるので、ノータックパンツでもモモ部分を
極端に太くしたオックスフォードバッグスやバギーパンツなどと
いうシルエットのパンツも仕立てることができ、タック入りの
パンツならより太めのパンツシルエットを作り出すことができます。
また、逆にストーブパイプや、パイプドステムなどのスリムパンツ
には、タックのないノータックパンツのほうが向いていると言えます。
シック
オーダーで仕立てるスラックスでは標準仕様となる、パンツの股部分内側
に付けられる補強用の布のこと。
パンツの前側に付けられるものを「前シック」、
後ろ側に付けられるものを「後ろシック・尻シック」といい、
オーダーパンツでは、この「尻シック・股ずれ防止布」が標準仕様。
フォークピースともいいます。
シックはパンツの力の入る部分や、透け防止等の補強用に
付けられ、特に丈夫にしたい場合、大判の尻シックとしたり、
パンツ生地と共生地で仕立てたりする場合もあります。
自転車通勤する方や、太ももが太く、パンツの股部分に
負担がかかりがちな方には必須です。
フロントダーツ
ジャケットにウエスト部分の絞りを入れるために、
前身頃に入れられるダーツのこと。
平面的な布地を、立体的な身体に沿わせるための
縫製技法(ダーツ・縫込み)で、センター・フロントダーツとも
言われるもの。
このフロントダーツを多めに取れば、ウエストの絞りが
きつい(バストとウエストの差寸大きい)、ドロップ差の
大きなジャケットとなり、逆にアメリカントラディショナルモデルの
スーツなどの場合、このフロントダーツをとらないことで、
ずん胴的なボックススタイルとする。
また、レディーススーツの場合には、このフロントダーツと
いう場合、ジャケットフロントの中心線から、バストポイント
に向かって身体の曲線に沿わせるために入れられるダーツのこと。
仮縫い
仮縫いはスーツを仕立てる際のひとつの作業。
中縫いなどと呼ばれ、ご注文者の体型に合わせて
裁断されたパーツを、しつけ糸で一旦洋服の形に作ったものを、
着合わせし、補正するためのものです。
イージーオーダーやパターンオーダー、
高級プレタのブランドなどが、メイド トゥ メジャー
といっているのは、いわゆる直縫いで、仮縫いがなく、
着用者の寸法に一番近いパターンを使用し、
寸法調整・体型補正を加えた上で、縫製作業を
すすめます。
仮縫いをするメリットは多くありますが、
寸法的な微調整を実際に仕立てる服地で、実際に着用し、
確認することができる点。
目で見て調整が必要な寸法を、そのまま本縫いにすすめる
ことができるため、仕上がり後のスーツイメージが
しやすいです。
反面、仮縫いに対応しているパターンは比較的古いものが多く、
費用・時間ともにかかるため、クラシコスーツや、ブリティッシュスーツ
など、現在モードのパターンでスーツを仕立てたい場合には、
不向きです。
肩巾
スーツでいう肩巾は、ジャケットの左肩先~右肩先までの寸法。
ジャケット現物を採寸する場合、衿下2.5cmを測るのが基準と
されており、一度には測りづらい場合、左肩先~背縫い線(衿下2.5cm)
までの位置を採寸し、2倍する。
この肩巾は流行により広くなったり、狭くなったりしますが、
基本は人体のバスト寸法。バスト寸法が大きければ肩巾も広く、
小さければ狭くなります。
また、メジャーで肩巾を採寸する場合、肩線と腕外側のそれぞれ
延長線上の交点を、肩パッドの厚みなどを考慮して測ります。
ジャケットのシルエットにも大きく影響する寸法で、
広めの肩巾となるアメリカントラディショナル・モデルや、
イタリアン・コンチネンタル、比較的狭めの肩巾となる、
ブリティッシュモデルなど。
額縁仕立て
衣服など服地の裏布処理、後始末の仕方で、額縁のように見えることから。
額仕立て若しくは鏡仕立てとも言われるもの。
オーダースーツでは、ジャケットのサイドベンツがこの額縁仕立てで処理されており、
袖を本開き仕立てとする場合の、袖明きがこの額縁仕立てとされることが多い。
また、衿の仕上げ飾りとなるトリミングや、布団の裏布などにも用いられる。
袖本開きの場合の袖先の処理は、額縁仕立てにすると袖丈に伸縮調整の必要が
仕上がり後に出てしまった場合に難しく、敢えて額縁としない選択もできる。
一般に額縁仕立てとなる袖本開きに対して、釦止めをフェイクとし、袖先のみ
本開き同様の切り込みを入れ、額縁仕立てとしたものを「半額縁仕立て」という。
身頃
スーツのジャケットの部分で、衿や袖に対して
胴の部分を総称する。
前部のことを前身頃、後部を後ろ身頃と呼び、
それぞれ前身、後ろ身と略称される。
洋装、和装ともに用いられ、ワンピースやコート
の場合には、胴部分のみでなく裾までを含めて
身頃といいます。
オーダースーツでは前身、後身の巾や、前丈、後ろ丈
の長さは体型補正の際に重要で、前屈みになった
屈伸体型では、前身が短く後身が長く必要。
反り身となった反身体型では、前身が長く後身は
短い補正となります。
身頃、いわゆる身幅は、採寸部位として、
「半胴寸法」と言われるもので、ブリティッシュスーツや
クラシコスーツでは、この半胴といわれるウエスト採寸部を
絞り気味に、アメトラスーツでは、フロントダーツを入れないなど
して、ボックス型など、シルエットの特徴を出します。
見返し
ジャケットの袖口の裏や、身頃の裏の前部に見られる、表と同じ生地を使った部分のこと。フェイシング、またはインターフェイシングという。背広の内ポケットの口部分、表地とつないだような感じに仕立てることを、お台場仕立げ※、お台場つきといっているが、高級なもののみにみられる技術である。
※メンズのスーツ、コートなどの見返しと前裏にかかる内ポケットの仕立て方のこと。見返しと前裏とは布の厚さが違い、その部分にまたがるようにポケットがつくと段がついてしまうので、見返しをつき出したように断ち出しておく。そのかたちが、東京湾の出入り口にあるお台場(防御用人工島)に似ていることから呼ばれたものといわれている。
ヘムライン
「裾線」・「ふち線」のこと。
ヘムには、布や衣服のへりや縁(ふち)、
縫製時の、「縁縫いをする」「へりを取る」などの意味があります。
ヘムラインはフィッティング時、着用者の衣服全体のシルエット
を考慮し、スカート、袖口、シャツの裾などで決められます。