服飾用語
ナノテクノロジー
オーダースーツやジャケット、パンツに使われている生地素材を
選ぶ際の基準として、デザインや流行のほかに、機能面が重視される
のうになってきているところから、注目を浴びているナノテクノロジー。
ナノテクノロジーは、物質を原子や分子の大きさにおいて
自在に制御し、産業に活かす技術のこと。
技術によって10億分の1という非常に小さい単位の繊維粒子に
撥水加工を施すことで、通気性が良く、また本来の表面感を損なわずに
撥水、防汚の機能性をもった生地が誕生しました。
環境に影響のない加工技術で、エコロジーにも配慮されています。
撥水加工だけでなく、抗菌・防臭、防油、花粉を軽減するなどの
高機能な生地のスーツもあり、着用する人の強い味方となっています。
メイド トゥ メジャー(メジャーメイド)
パターンオーダーやイージーオーダーなどの仮縫いや中縫いを省略した
縫製手法で注文服を仕立てること。
高級プレタのブランドなどが、既製品では出来ない寸法の調整が可能な商品を
取り扱う場合に「メイド トゥ メジャー」という言葉を使うことが多く、採寸ののち
ブランドのコンセプトに合った基本となる型紙を微調整し、細かな体型補正かけて
縫製をすすめる。
メイド トゥ メジャーとされるものにも、わずかな調整しか出来ない極めて既製品に近い
ものから、細かく補正できるものなど多様な種類がある。
「ス・ミズーラ」は、パターンオーダーやイージーオーダーなどの注文服を指す
イタリア語で「メイド トゥ メジャー」と似た意味の言葉。
サイジング
仕立てるジャケットやパンツに対してのゆとり量の
取り方のこと。
2017年秋冬シーズン頃から少しずつ、タイトすぎない、
若干のゆとりを持たせたシルエットがトレンドになりつつあり、
スラックスのシルエットも、ノータックからタックを入れることで、
ヒップまわりに余裕のあるワンタックパンツ、ツータックパンツの
お仕立てご依頼をいただくことも多くなってきました。
前回スーツ寸法を基本として微調整後寸法でお仕立て
いただけるオーダーメイドでは、例えば肩巾寸法を、
+1cmや、ジャケットウエストをまわりで+2cmなど
といった、トレンドに合わせた補正にもご対応可。
薄手、春夏向きなカノニコスーツ素材や、コットンスーツ、
リネンスーツも少し風通し良いシルエットへの寸法調整を
お考えいただくのに良い時期かも知れません。。
向こう布
ジャケットの胸ポケットや、ベストの腰ポケットに付けられる
ハコポケットや、ビジネススーツ標準とされることが多い、
腰位置のフタ付きポケットや、フタなしの玉縁ポケットなどの、
ポケット口から、裏布や袋布など付属類が見えないように、
袋布上部に縫い付けられる表地のこと。
アウトポケット(パッチポケット)のように、表地を身頃に
貼り付けてポケットとするようなものや、袋布自体を、
表地を使って作るようなときには、この向こう布は付けられない。
また、この向こう布を表地とは別生地で仕立てるなど、
あえて「ちら見せ」を狙うオーダーデザインのひとつとしても
人気があります。
明き
ジャケットやパンツなどの衣服に、動きやすくするため
やデザインの目的から作られる、「明いた」部分のこと。
ジャケットの「ベント」や、袖の「本開き(本明き)」は、その
代表的なもので、「ベント」は開けることで腰回りを楽にして
くれ、「袖本開き」は、現在オーダーらしいデザインとして
人気のオプションとなっていますが、その昔は作業をしやすく
するなど機能的な目的から付けられていたデザインのひとつ。
この「明き」は作り方によって、ジャケットフロントの打ち合わせ
に見られる「打ち抜き」「突合せ」「比翼仕立て」、
ポケットデザインの作り方に見られる「玉縁明き」「差込」などがあり、
ボタンやファスナー、スナップなどによって明き口を止めて使われます。
ダブル巾
織物に使われる巾の規格で、主にスーツやジャケット、
パンツを仕立てる際に使われるウールに使われている
もので、およそ60~62インチ(152.4cm~
157.5cm)の織り巾のこと。
これに対し、シングル巾は1ヤードを基準とした、
91.4cmの織り巾でシルクやコットンなどに
多く使われています。
このダブル巾は、標準サイズの人の上下スーツ、
または、ベスト付きの3ピーススーツ、
パンツを2本とした2パンツスーツを仕立てるのに、
ちょうど良い生地巾となっており、生地巾は、
要尺計算をする際の大事な目安。
生地巾が狭いと同じスーツを仕立てる際にも、
長い生地が必要になり、広いと少なくて足ります。
シングル巾
スーツやジャケットの要尺を計算する際に重要な要素となる
生地巾は、コットンやリネン、シルク、ウールなど使用される
素材や、生地の種類によってさまざまなものがありますが、
織物の生地巾の標準的な規格として用いられているこの
シングル巾は、およそ90cmの生地巾。
シングル巾のシングルは、生地巾が1ヤード(91.4cm)で
あることに由来するもので、1ヤードが36インチである
ことから、36(さぶろく)巾と呼ばれたり、ヤール巾と
呼ばれたりします。
これに対して、ウール素材の標準的な織り巾「ダブル巾」は、
およそ152cm~157cm程度の生地巾。
スーツやジャケットの要尺計算では、この生地巾が狭いと
余計に生地長さが必要になってしまったり、またデザインに
よっても要尺が多く必要になるものもあるので、
オーダー生地にとって生地巾が何センチであるかは、
とても大事です。
スーツ規格サイズ
メンズスーツのサイズ標準として使われている、
A5や、Y6といったサイズ表示は、ジス
(Japanese Industrial Standard)によって定められている
標準規格になります。
バストとウエストとの差寸を、2cmピッチ、20cm~
0cmの間で、分類されている体型区分と、155cm~
190cmの間で区分される身長区分との組み合わせで
あらわされており、「体型区分」は「J、JY、Y、YA、
A、AB、B、BB、BE、E」の10区分のアルファベット
が当てはめられています。
このスーツサイズ規格も含まれる、JIS規格には多くの
工業製品についての標準規格がありますが、衣料品については、
成人男子用、成人女子用のほか、少年用、少女用、女性の
バストとアンダーバストとの差寸で決められる「ファウンデーション」
などの規格サイズが決められています。
ジャストウエスト
人のウエスト位置に、ジャケットなど衣服のくびれが
ちょうどくるように作られたもので、標準的なウエスト位置
より高く作られる「ハイウエスト」や、逆に低い位置に
くびれが作られる「ローウエスト」の対語として使われます。
ノーマルウエストラインと同義。
現在使用されるメンズスーツのジャケットモデルの中では、
ブリティッシュスーツ、クラシコスーツなどは、ウエストライン
が高めに設定されており、ショート丈のジャケットは逆に
低めが標準的なパターン仕様。
また、低いウエスト位置で着用する腰ばきの「ヒップボーンパンツ
(ヒップハンガー)」の対語としても使われます。
縫製指図書
一人のテーラーが、採寸し、ご着用者とデザインを決め、
仮縫い、着合わせ、縫製、納品のすべてを行っている場合にも、
作られますが、近年の店舗と縫製工場がわかれている
オーダースーツ縫製には欠かせない、縫製工場に対する、
デザインや縫製の仕様を説明する一定の書式にそった
書類のこと。
縫製仕様書とも呼ばれるもので、各採寸部位の寸法指定は
もちろん、ジャケットモデルを「クラシコスーツ」、
「ブリティッシュスーツ」や、衿型を「ノッチ衿」、
「ピーク衿」など、主なデザインのほか、ステッチ色や穴かがりを
標準とは異なる赤色で入れるなど、特徴的な縫製仕様が
明記されています。
スワッチ
カノニコや、ホーランド&シェリー、ハリソンズオブエジンバラなど
各生地ブランドが、自社生地で製織している
生地を紹介するために作られた生地の見本帳のことで、
オーダースーツのテーラーに置かれているバンチブックと
言われるもの。
春夏と秋冬の2シーズン用に分かれており、中には
フォーマル専用のスワッチ、ジャケット服地を集めた
カジュアル素材向けのスワッチなど多くのものが
あります。
各生地ブランドによってそのバンチブックが
提供される周期はさまざまで、定番素材として
長く使われるものから、1年または2年の短い期間で、
新柄追加された新しいバンチが提供されるものなど。
また、見本用として用意されたオーダースーツ用生地の
小片のことを言うこともあります。
死に筋
シルエットやデザイン、色柄などから、
現在の流行に合わず、あまり売れない商品の
ことをいう業界用語。
反対によく売れる商品のことを「売れ筋」と
言われるのはよく耳にします。
「売れ筋商品」など。
オーダースーツ生地でも、その年によって
人気のある「売れ筋」、数年前にはやった柄や、
独特の素材感、色柄のためにあまり売れない
「死に筋」とがあります。
やはり、ここ数年は、スーツ生地もジャケット生地も、
2014年のワールドカップサッカーの日本代表
公式スーツから人気が出たチェック柄が「売れ筋」
色が濃いめなのが好まれているのも相変わらずです。
シルエットはタイト。
逆に「死に筋」は、もちろん好みもありますが、
あまりタイトに見えない明るめだったり、パステル調
だったりする淡い色の服地。
この間、今頃になって「東京ラブストーリー」をはじめて、
ユーチューブで見たのですが、カンチも含め、あの
当時の誰もが着ていた、アルマーニ調のソフトな
シルエットが、かっこ良く見えた時代があったのか・・、と
不思議に思えてしまいました。
キャド(CAD)
コンピューターのプログラムがデザイン設計の支援をして
くれるキャド(CAD)は、近年、建築設計ほか多くの業界で
取り入れられており、アパレルでのパターン製作や、
オーダースーツでのグレーディングにも欠かせないものになっています。
個人の仕立て屋さんでは、着用者の採寸寸法から、
オーダーパンツやジャケットを仕立てる各パーツを
定規のみで製作したり、あらかじめモデルごとに
製作された型紙を微調整して、
裁断作業にかかるところ、各採寸部位寸法を
コンピューターに数値入力するのみで、パターンを
製作してくれる、いわゆるコンピューター裁断と
いわれるものがこのキャドを利用した縫製工場の
システム。
CADは、Computer Aided Design(コンピュータを
使った製図システム)の頭文字からの略称。