ジャケットデザイン
スリーブボタン
背広の袖先のボタンこと。 時にはシャツのカフスボタンをいうこともある。現在は飾り的効用しかないが、本来は開きを入れてボタン留めとしたもの。これを「本開き」といい、欧米ではドクタースタイルの俗称がある。
レスオーバーラップDB
ダブルブレステッドの型で、打ち合わせがごく浅いものをいう。
古い人の中には、セミダブルという人もいるらしい。
ダブルジャケットの打ち合いというのは、ジャケットのフロント・前合わせが重なったところ。シングルジャケットの場合にもこの打ち合わせがあるが、1.5cm程度前端から入ったところに釦が付けられており、これが打ち合わせとなる。
この打ち合わせが深い両前背広・ダブルジャケットの、重なりを浅くしたのが、レスオーバーラップ・ダブルブレストで、衿の返り線が垂直に近くなり、通常のダブルジャケットとは、また異なった表情を見せる。
オーダースーツの場合には、この打ち合いの重なり具合を指定することも可。比較的難しい寸法指定なので、ご愛用スーツをお送りいただき、浅くしたい調整寸法をお知らせいただくのがおススメです。
レザーパッチ
カントリー調のツイードジャケットなどの肩やひじ部分に張り付ける革片の総称。
パッチはつぎ当ての小さなきれのことをいいますが、貼り付けるという意味ももち、共布またはレザーパッチのような異素材や異なった色を使い装飾目的で付けられることも多い。
オーダースーツをお仕立ていただく、Pitty Savile Rowのような店舗でも、ガンパッチ、エルボーパッチなどを付けていただくことはできますが、革製品を縫製するミシンは特殊なため、エクセーヌのような人工皮革、スエード調の生地、共生地、その他ウールなどの別生地を使用します。
また、現在使用されているレザーパッチの革も本革よりも、フェイクな人工皮革が多いように思います。
リージェンシーダブルブレステッド
リージェンシーは英国のジョージ4世が、狂人となった父君ジョージ3世に代わって摂政を務めた、1810年~20年の10年間、すなわち「摂政時代」のことである。この時代はブランメルが活躍したころで、現代のメンズファッションの基礎が培われた記念すべき年代でもある。さらには19世紀初頭の英国の服飾をも意味する言葉として、「リージェンシー」は広い意味で使われることが多い。
リージェンシー・ダブルブレステッドは、その時代の雰囲気からネーミングされたダブルブレステッドスタイルをいう。オールインラインに並んだ6つボタン3つがけ、ウエストは当然高くとられ、ロールした衿が付き、深いサイドベンツを特徴とするシェープドラインのスーツは、主にチョークストライプ地で作られた。1969年ごろアメリカで流行し、日本ではベルエポックなどの言葉とともにシェープドルックとして流行したものである。
過ぎ去った美しい時代のシルエットとなるオールインラインが釦巾を等しい巾に配列した釦配置をもつものに対して、スプレッドアウトは、一番上の2個の釦間隔のみ広く取られた釦配置となるもの。現在のダブルジャケットの釦配置としては、このスプレッドアウトのほうが一般的。
※チョーク・ストライプ
チョークは<白墨>の意で、黒や紺、茶などの濃色地に白墨で線を引いたような単純な縦縞のこと。輪郭が少しぼやけてみえるのが特徴。
ボタンワンダブル
ダブルブレステッドの背広上着などで、6つボタンの下ひとつがけとなっているデザイン。1920~30年代のボールドルックによく見られる型で、衿が大きく長く折り返り、Vゾーンも比較的広くなる。ボタン位置は左右に3個ずつ、逆梯形型となっている。
ダブルスーツの中では、ダブル4釦1掛のシルエットをもつジャケットをロングターンと別名で呼ぶなど、多くの人に愛されているデザインも多い。シングルスーツのように、前釦をはずして着用することがないダブルスーツは、着こなしの巾が狭いため、ファッション的にはコーディネートが難しいアイテムと言われることが多いが、なかでもVゾーンが広く、ゆったりめに着るダブル6釦1掛(ボタンワンダブル)は、融通のきくシルエット。日本的略礼服・ブラックスーツには、釦位置が高くVゾーンも狭く、よりフォーマルらしく見えるダブル6釦2掛けが一般的。
若干ルーズさのあるダブル6釦1掛けとすることは、あまり多くないです。
※ボールド・ルック
1930年代に登場し、40年代末に米国で流行したメンズ・スタイル。ボールドは<大胆な>の意味で、ボールド・ルックはパッドを入れて肩を強調し、ラペルやネクタイ幅の広い、派手なファッション。
ボタンスルー
「打ち抜きボタン」のこと。 フライフロントなどボタンが表に出ないのに対して、ボタンホールを通し、ボタンが表側に見える仕立て方を総称する。
シングルジャケット、ダブルジャケットを問わず、ごく一般的にあるジャケットフロント釦、パンツ前立て釦など、の作り方で、この作り方をされたものはすべて「打ち抜き釦」と言われる。古い縫製職人さんなどが、ちょっとぶっきらぼうに、「ぶち抜きボタン」とか、「ぶち抜く」といわれるもの。通常ジャケットのフロントボタン位置から、ジャケット前端までは1.5cmが標準となり、「打ち抜きボタン」はこの位置にボタン穴が開けられるもの。それに対して、比翼開きは、ボタンが隠れるように二重構造となっているため、防寒に適した仕立て方となっている。
ベロウズプリーツ
アクションプリーツの正式な名称。 機能性を増してより快適な気分をするために、カジュアルなジャケット・ジャンパー・作業服などの両脇、背中央、袖の後部などにに深くとられたヒダのことである。アクションバック。
ベローズは、蛇腹を意味することから、この細くまっすぐなヒダをもつプリーツを、ベローズ・プリーツというほか、アコーディオン・プリーツとも呼ばれる。また、ベローズ・ポケットは、この蛇腹のベローズプリーツを脇にもつアウトポケットのことで、同様のものをアコーディオン・ポケットという。
運動量を増やす機能的なデザインであるとともに、装飾的なディテールとしてもカジュアル、スポーティーな雰囲気を出すのによく使われるデザイン。
ファンシーバック
さまざまなディテールデザインがほどこされた背中部分の総称。特にスーツ、ジャケットについて新しく使うことの多い用語である。ストレートヨークやスカラップヨークなどの変型ヨークをつけたもの、それにバックベルト付きとしたもの、サイドボディといって曲線的なシームとなったもの、センタープリーツ&バックベルトとしたものなど変わったデザインで種類も多い。スーツのスポーティ化のあらわれといえる。ニュートラディショナル調のものに多く見られる。また、バックアクセントやバックトリートメントの言葉もある。
ニュートラディショナルは、新しいファッション感覚を取り入れた現代的なスタイルのこと。特別に決まった形があるというのではないが、主にヨーロッパ調の高いファッション性を取り入れられたものとされることが多く、ソフトトラッドと同義。日本的<山の手お嬢様ファッション>のニュートラとはまた、別のもの。
新感覚スタイルのニュートラディショナルと、装飾目的からバックスタイルにアクセントをほどこす目的の、ファンシーバックとは相性の良いもの。
※バック・ベルト
コートやジャケットなどの背部につけた半ベルトのこと。背バンド、ハーフベルト、またはマーティンゲールともいう。
バック・トリートメント
スーツ・ジャケットの背面デザイン処理のこと。 ファンシーな雰囲気を盛り上げるため、機能性とは別の観点から変型ヨーク、センタープリーツ、アクションプリーツ、バックベルトなどを特徴とするもの。ファンシーバックなどともいう。
もとは、どのデザインも機能的な要請から取り入れられ定着したものだが、次第に素材を裁断・カット、デザインの工夫などで機能的に着ることから、素材そのものが進化し、その役目が重要視されなくなったもの。ヨークは、いろいろな部位に入れられ平面の生地を身体に沿わせるため、センタープリーツやアクションプリーツは、ヒダのゆとり量で見た目よりもゆったり、楽に着用でき動きやすい。バックベルトは、ジャケットの脇縫いに差し込まれるなど、装飾的な意味合いが強い。
※ヨーク
肩や胸、背、あるいはボトムの腰などに使う切り替え部分のこと。フラットな素材を身体の曲線などに合わせるための機能的な目的と、デザイン上の装飾目的とを兼ねて用いられる。
ノッチラペル・ダブルブレスト
ノッチドラペル(菱衿=普通衿)を特徴としたダブルブレステッド型のスーツやジャケットのこと。普通、ダブル前のものにはピークドラペル(剣衿)がつけられるが、イタリアに生まれたこれは新しい感覚があるとして流行してる
ジャケットの打ち合いをダブルとするピーク衿ジャケットの衿型を変形させることは、ノッチ衿ばかりではなく、セミピークとしたり、クローバーなどとしたりということもオーダースーツ的にはそれほど難しいことではない。このダブルの打ち合いにノッチ衿とした、ノッチラペル・ダブルブレストとするときの、前の釦数は、2釦1掛や4釦1掛など、比較的低い釦位置でゆったり着こなすシルエットが多く、剣衿のダブルスーツがフォーマル寄りなシルエットを持つのに対して、カジュアル傾向の強いものとなっている。
段返り
トラディショナルモデルの背広に見られるボタンの付け方で、第一ボタンがラペルの裏側に隠れた感じのものをいう。したがって、そのボタンホールは衿の外側からはっきり見えることになり、こうしたデザインはトラディショナルモデルの象徴とされる。
いわゆるアメリカン・トラディショナルモデルのフロントデザインで、ブルックス・ブラザーズがアメリカ合理主義的、着心地の楽なボックスシルエットとするスーツに「ナンバーワンサックスーツ(Ⅰ型スーツ)」と名前を付けて商品化したモデルのもの。アイビースーツは、3釦上2掛・フックベントを特徴とするが、このアメリカン・トラディショナルを代表するトラッドスーツは、この段返りの衿型+センターベントとなる。「ナンバーワンサックスーツ」はアメリカ型ビジネススーツの典型と言われる型。
それまで、ぴったりタイトなオーダースーツのみがスーツとされていた時代から、多くの人に着られる標準体型・プレタスーツが躍進するきっかけとなった背広型となる。
ダブルブレステッド
ジャケット、コートなどの前の打ち合わせがダブルになっているものの総称、またそうしたスタイル。この場合の衿型はピークドラペルが使われ、フロントカットは水平になるのが常識とされる。
シングルジャケットが片前合わせと言われるのに対して、ダブルジャケットは両前合わせと言われるもの。前釦の数や止める釦数などによって、4釦1掛、6釦1掛、6釦2掛などバリエーションも豊富。
1掛の釦掛けのほうが、2掛よりもVゾーンは広くなりゆったり着用できるスタイル。ダブルジャケットは、腰まわりをすっぽり隠すことができるデザインのため、一般には太めの人に向いたデザインとされる。
ベントは開けるならサイドベンツ、または開けないノーベントで、センターベントとすることはない。
略礼服などにも多用されるダブルスーツ、だらしなくなるという理由から前を開けて着用することがないため、着こなしの巾が狭いのが難点。個性的なVゾーン構築が工夫のしどころです。
センター・プリーツ
ジャケットなどの背中、中央縫い目にとられるヒダのこと。スポーティなアクセントのひとつでありバックベルトと共に用いられることが多い。
布を立体的に装飾化したものがプリーツで、布を折りたたんで作るヒダため、そのゆとり分運動量が増え、動きやすいジャケットとなる。
プリーツには2種類あり、布地を折りたたんだできる折り山となる部分をミシンで縫ってしまう「ダーツ」と、折り目のあいまいな「タック」
このセンター・プリーツとされるものは、主に「タック」を左右両側から折りこんだ「箱ヒダ」と言われるもの。
バックベルトは、ジャケットわき縫いに差し込まれる形で取り付けられる共生地の帯状のベルトで、現在では装飾目的で付けられる場合が多い。肩ヨークなど、ジャケット肩部分の切り替え布の下にとられる。
スプレッド・アウト
ダブルブレステッド6つボタンの中がけ、または下がけとなったジャケットで、一番上のボタンが左右に開いてつけられる型をいう。オールインラインに対して用いる言葉。
オールインラインは、ダブルジャケットで左右に付けられる釦配列が縦では直線的、並列に釦位置が配置されるもの。現在仕様のダブルジャケットでは、スプレッドアウトのほうが一般的だと思います。。
オーダースーツで仕立てる場合、スプレッドアウトは6釦1掛(ボタン・ワン・ダブル)のようにルーズフィットなゆったりめな着こなしをしたい場合、オールインラインは、6釦3掛や8釦4掛のように、衿の下げ止まりが高くVゾーンも狭くなる、タイトめイメージなダブルジャケットに相性が良いシルエットとなる場合が多い。
シングル・ブレステッド
ジャケットやコートなどの前の打ち合わせがシングルになっているものの総称、またそうしたスタイル。一般に「片前」という。この場合の衿型はノッチドラペルが使われるのが主である。
ビジネス用スーツ定番のシングル2釦スーツや、シングル3釦スーツなどと言われる場合のシングルのこと。シングル・ブレストのブレストは「胸」。
シングル・ブレストのスーツは、フロントカットの開き具合なども多くのバリエーションがあり、大きくカッタウェイされたものから、ダブルスーツのようにスクエアとされたダブルカットもシングルスーツには合わせることがある。オーダースーツ的にも、格式ばった堅いイメージのダブルスーツに比べて表情が付けやすく、カジュアルジャケットにも多く着用されるもの。
クラシコスーツ、タイトスーツ、ブリティッシュスーツなどといわれるシルエットは、シングル、ダブルそれぞれの前合わせの上に構築される、寸法調整、ディテール変化的なシルエットパターン。
ゴージ
背広の衿などに見られる「衿きざみ」のこと。 ”ゴージライン”といえば、上衿と下衿で構成される線のことをさし、この高低でラペル巾、背広のシルエットが変化する。
上衿(カラー)と下衿(ラペル)の縫い目線で、正確にはこの縫い目線上、衿の折り返り部分から衿先までをいうが、このゴージが「衿きざみ」を構成することから、「衿きざみ」の位置を表現するのに「ゴージ位置が高い・低い」などの使い方をされる。
ジャケットのシルエットによって、またその時代の流行によってもこのゴージラインは左右され、クラシコ系スーツの場合には、ゴージ位置が高く・角度も高い、レギュラー的クラシックスーツの場合には、オーソドックスなゴージ位置・角度など。
また、ゴージ角度の高いクラシコスーツの場合には、衿巾は太めが標準設定となる。