ジャケットの衿型
ブレイクポイント
ジャケットの衿の折り返り線の下端。
ラペルの下げ止まりの位置のことをいいます。
シングル2釦のスーツの場合にも、釦位置に対しての
ブレイクポイントの高さは、仕立て方やシルエットに
若干の影響を及ぼします。
釦位置いっぱいにブレイクポイントがくるものを、
衿の下げ止まりが「辛い」と言ったりまた、逆に釦位置より
少し上めにくるものを「甘い」とその状態を表現します。
ブレイクポイントによって、ジャケット型名称も変わり、
アイビージャケットのジャケット型となるシングル3釦上2掛、
クラシコイタリアの代表的なジャケット型となるシングル3釦中段返り、
アメリカントラディショナルモデル(アメトラスーツ)の代表的な
ジャケット型となるシングル3釦段返り。
ブレイクポイントのみの違いではありませんが、その釦位置に対して
の下げ止まり位置は、それぞれのジャケット型の重要なポイントと
なっています。
テーラードカラー
衿型の1種で、背広型の衿を背広以外に用いた場合に呼ばれることが多い。主として女性のドレスなどに使われる。
ワイドハードラペル
背広の上着、ジャケットの衿デザインの1種で、ボールドな感じを強調するため、ワイドラペル(幅広の衿)にかための芯地を入れて、かたい感じに仕上げたものをいう。極端に広くなりすぎた衿が、風でバタバタしないように考案されたものである。
広い衿巾にはパターンによって上限があり、体格が大きく身幅が広い人ほど広くとることができます。一般には10~11cm程度が限界で、ノッチ衿よりもピーク衿のほうが広めの衿巾を指定できることが多いです。
衿はワイドラペルでなくても、ご着用を重ねるうちに、軽くそってきてしまったり、なんとなくたよりなくなってしまうことがあるため、気になる方のご希望によっては、かための衿芯を使うほか、二重にするなど、工夫することがあります。
衿巾広めのワイドラペルならなおさらなことかも知れません。
ラペル
背広やコートの「下衿」のこと。 「上衿」はカラーと呼ぶ。背広の流行、ルックスの違いによって狭くなったり広くなったりまた、さまざまなデザインが考えられている。
基本的には、肩巾やまわり寸法が大きくなれば、ラペルも広くなり、逆に小さくなれば、ラペルも狭くなる。広いラペルをワイドラペルといったり、狭いラペルをナローラペルといったりします。
現在のショート丈・タイトスーツ傾向のラペルの場合には、細身で肩巾なども狭いため、ラペルも狭いのが一般的。
また、合わせるネクタイは、ラペル巾に比例し、この肩巾・ラペル・ネクタイも太さバランスは密接に関係がある。
外側に膨らむベリードラペルや、エッジが直線的なものなど、また、クラシコスーツやブリティッシュスーツ、トラッドスーツなどで差のあるゴージ高さや角度によっても、ジャケットラペルの表情は変わる。
マンダリン
パジャマの上着に見られる1インチほどの高さのスタンドカラー。ボタン留めや、またはフロッグ(装飾的に付ける飾りボタン)留めとなっている。マンダリンカラーは、もともと中国清朝時代の官吏が着た制服の衿型で”チャイニーズカラー”とも呼ばれる。「詰衿」を連想すればよい。現在でも中国服に多く見られる立衿の形。
このマンダリン・カラーは1960年代毛沢東が着用していたことで有名になった「マオカラー」と同じ形をしており、同じ時期インドのネール首相が着用していた「ネールジャケット」の立衿となる「ネールカラー」ともはっきりとした区別があるわけではない。
それぞれの衿型を使用したジャケットとなる場合、ネールジャケットは全体的に細身なシルエットをもち、マンダリン・ジャケットは幅広の袖、中国風の豪華な刺繍が施されるなど、テイストの違ったジャケットとなることが多い。
マオカラー
衿型の1種。 中国人の人民服に見られるような立衿(スタンドカラー)のこと。正式には立衿が折り返っているが、一般的には学生服の詰衿と同じである。マオとは毛沢東主席のことである。また、これに似たものに"ネールカラー"があり、両者の違いは衿開きの差によるという説があるが、厳密なルールがあるわけではない。
マオカラーもネールカラーもどちらも1960年代に流行した衿型だが、その起源は古く、マオカラーは、チャイニーズ・カラー、マンダリン・カラーとして中国清朝の高級官吏の着用していた中国服の衿型として、ネールカラーも、もとはインドの王侯(マハラジャ)が着用していたラジャー・ジャケットの衿型としてのもの。
現在、この形の立衿をいう場合、マオカラーというのが一般的。オーダースーツとしても、特殊シルエットとしてマオカラー・ジャケットは対応可。
※人民服
濃色の生地を使い、一般には木綿製で冬には綿入れのものもあった。文化大革命当時に多く着用され、男性は官吏、学生、農民等全階層に、女性は工員層を中心に普及した。
ベリードラペル
ワイドラペルの1種で、特に内側にラインを弧状にえぐった感じのもの。1970年イタリアのスーツにあらわれ、ロープドショルダーと共によく用いられた。丸いラインを描くには特別な技術が必要とされ、洋服屋泣かせの衿型である。ベリードはベリーbelly(ふくらんだ部分、ふくらむ)の意からきている。
ロープドショルダーは肩先にロープがはいったように見える肩線のことをいい、ビルドアップショルダーと同じもの。
ベリードラペルは、広巾な下衿に合うようにカラー(上衿)もごつく、キザミも大きくなる、昭和が色濃い衿型。石原裕次郎が「太陽にほえろ」で着ていたスーツや、往年の映画スターや歌手が着ていたスーツを思い出します。ウエストがタイトめにシェイプされ、すそにかけてきっちりフレア。肩幅はそれほど広くはないので、衿巾の広さが余計に目立ちます。
フラワーラペル
ごくファンシーなスーツの衿型で、ピークドラペルの上衿の先が丸く、下衿の先が大きな花弁状とされたもの。
広めな衿巾と衿先が大きく丸くなったデザインは、メンズスーツよりもレディース仕様のスーツに多く見かけられる。クローバー・リーフ・カラーはノッチ衿がもとの衿型とされるが、大きくカスタマイズデザインされたフラワーラペルは、キザミも多少あり、外見上区別の難しいものもある。
おおぶりな衿型のため、厚地の防寒用コートとも相性が良く、バックベルト、色つき釦、太糸で入れられたステッチなどファンシーなデザインがイメージ。
ピークドラペル
背広の衿型の1種。 下衿の角度を大きく上にあげたもの。主としてフォーマルスーツの上着に使われる。ピークは「峰」のことだが、日本では"剣衿"の俗称がある。下衿が剣先のように尖っているところから。
ダブルスーツ標準の衿型とされることが多いため、日本的ブラックスーツとして一般的なダブル6釦2掛スーツなどフォーマルスーツにはおなじみの衿型。ほか、以前から夏にも打ち合いはシングルでも、衿型のみはピークなど、フォーマル傾向の強い衿型と考えられている。
フォーマル的正しい礼装となる、燕尾服、モーニングコート、タキシード、フロックコートなども衿型はこのピークドラペルとなる。
ノッチよりも広めの衿巾とされることが多く、下衿が大きく突き出た形は、ビジネス仕様となるノッチ衿に比べ、豪華で威厳のある表情をもつ衿型。
ピークド・ショールカラー
背広の衿型の1種。 ショールカラー(へちま衿)にV字形の縫い飾りを入れ、あたかもピークドラペルになったような衿のことである。タキシードによく用いられるファンシーなデザイン。
へちま衿は上衿と下衿を、ゴージできざみを作らずつなげることで棒衿とする衿型で、タキシードやドレッシング・ガウンによく見られるもの。フランス語ではコル・シャールと言われます。へちま衿の呼び名は、丸みのある長い衿の形がへちまに似ているため。
タキシードで用いられる場合には、衿表にフェイシングクロス(拝み絹)をかぶせる。夜に着用されるタキシードの衿表に光を反射させる絹を用いることで、昔の少ない明かりでも顔を見分けやすいようにという工夫かららしい。
ノッチドラペル
一般の背広に見られるごくオーソドックスな衿型。 俗に「菱衿」と呼ぶもの。シングルブレステッドのジャケットの衿はこれになる。
ノッチは上衿と下衿で作られる一般にはV字形となる「刻み」を意味することから、この「刻み」の入った衿で、ゴージラインがまっすぐなもの。ピークラペルは、上衿と下衿のエッジが重なっているため、「刻み」がない。
普通にスーツの衿型といえば、このノッチでビジネススーツには定番のもの。セミノッチ衿は、ノッチ衿と同様、「刻み」をもつ衿型だが、下衿の上部分の端が5ミリ程度三角に張り出した形をしている。
また、このノッチ衿も他の衿型と同じように、その時の流行のゴージの角度・高さによって、その表情が変化する。
ナポレオンカラー
衿型の1種。 ボナパルトカラーの別称である。高く折り返ったカラー(上衿)と幅広のラペル(下衿)を特徴としたもの。ナポレオン・ボナパルトによって軍服に採用されたところからこの名称がある。現在でもスポーティーなコートなどの衿型として見かけることがある。
また、このナポレオンの名前に由来するファッションアイテムには、ナポレオン・ハット、ナポレオン・ブーツがあり、ともにナポレオンが愛用していたものにちなむもの。
ナポレオン・ハットはフエルトなどの柔らかい素材で作られた二角帽のことで、フランス革命期以降軍人に使用されていたもの。ナポレオン・ブーツは、ヒザ上までの深さのあるブーツで、はき口の前から後ろにかけて下がる傾斜を特徴とするもの。
ティシェープドラペル(Tシェープドラペル)
背広の衿型の1種。
上衿の幅が下衿よりも広く、衿きざみの形がT字形になったラペルのこと。これを逆のスタイルにしたのがLシェープドラペルであり、共に変わり型の衿としてコンテンポラリーモデルに多く見られる。
コンテンポラリーモデルには、これでなくてはならないという決まった形があるわけではなく、テーラードスーツなどの伝統的なアイテムを、今日的な感覚で着こなすファッションスタイル。
主には、ソフトショルダーをシェイプしたボディーラインを特徴とするものや、ワイドラペルなど。ティシェイプドラペルも変わり型の衿型として、伝統的スーツスタイルに一味を加えるもので、ビジネス用のジャケットよりもカジュアル素材で仕立てられるものに見られる衿型となる。
ディービーラペル(DBラペル)
ブルブレストラペルの略称。
ダブルブレステッドのジャケット、コートなどに用いられるラペルの意味でピークドラペルのことをいう。
ピークラペルは、ダブルジャケットに合わせられることが多いための名称。剣ものなどといわれ、下衿の剣先が上につき出した形をしており、キザミのないのがピークラペルの特徴。
DBはD(=double・ダブル)、B(=breast・ブレスト)の略。フロントカットがスクエアで、腰まわりを隠す効果があるため、太めな方に向いたジャケットの形とされている。
ピークラペルは、シングルブレストのジャケットに合わせられることもあり、その場合にはシングルピーク。現在は、衿巾を細めにしたナローな衿型が好まれている。