袖・スリーブ
内袖
テーラードジャケットに標準で採用される、
2枚のパーツで作られる、2枚袖(ツーピーススリーブ)
の面積の小さな下側の袖のこと。
内袖は、着用時下側に位置する袖となるため、
下袖といわれたり、アンダースリーブと
言われたりする部分。
袖を内袖、外袖の2枚のパーツに分けて
裁断し、縫製する理由は、1枚のパーツで
仕立てられる1枚袖にくらべて、高い運動性を
持たせることができるため。
また、アンダースリーブという場合、
2枚の袖を重ねた袖仕立てのデザインとなる、
ダブルスリーブの下側の袖のことをさす。
外袖
テーラードスーツやジャケットの袖は、
2枚に裁断された袖のパーツを組み合わせて
仕立てられますが、その2枚の袖のうち、
外側の袖(トップスリーブ)のこと。
この外袖を含む2枚の袖パーツで
構成される袖仕立ては、2枚袖(ツーピーススリーブ)と呼ばれ、
大きな外袖(山袖)と、小さな内袖(下袖)で作られます。
トップスリーブ(外袖)といわれるのは、
ジャケットを着用した際、袖の外側に
位置するパーツとなるため。
山袖は、身頃に縫い合わせる袖部分の形状を、
袖山と呼ぶように、袖トップが山のような
形をしているため。
ツーピーススリーブ(二枚袖)
テーラードで仕立てられるジャケットの袖の
作り方で、山袖(外袖)と言われる、袖の外側の
パーツと、下袖(内袖)と言われる、袖の内側の
2つのパーツを組み合わせて、袖とします。
ゆったり、直線的なシルエットが特徴的な、
ワンピーススリーブ(一枚袖)に対して使われ、
2枚の袖パーツを組み合わせた袖先は、
一般にボタンが付けられ、「開きみせ」といわれる、
開いたように見える作り方がされます。
この袖先の仕立て方は、ボタンで止めることが
できる本開き(本切羽)としたり、スナップ止めといった
ファッション性、機能性を加えた仕様にも変更できます。
ワンピース・スリーブ(一枚袖)
ワンピーススリーブは、一枚袖のことで、
多くのテーラードジャケットの袖の作り方として、
標準的な二枚袖(ツーピース・スリーブ、
テーラードスリーブ)に対するもの。
二枚袖が、内袖(下袖)、外袖(山袖)の2枚で
作られていることに対して一枚の型紙で作られる
直線的な袖シルエットで、動きやすいメリットがあり、
ゆったりめなコートやジャケットの袖シルエットとなる
ストレートスリーブなどに代表的な袖の作り方になります。
スポーティブなボックスラインのコートや、ソフトな
シルエットをもつジャケットと相性が良いです。
深袖(ディープスリーブ)
一般的なジャケットの袖ぐり(アームホール)よりも
刳り下げた深い袖の作り方で、ディープスリーブとも
いわれるもの。
パターンオーダーでは、バストサイズに応じて、
袖ぐりの大きさもその大小が決められることに
なりますが、体型に合わせる補正を取り入れる
ことで、メンズスーツではバスト線よりアームホール
底部までの鎌深寸法を深くする微調整をすることが
できます。
逆にタイトスーツでは、袖巾も細くなるデザイン、シルエット
が一般的なため、鎌深の浅い「鎌浅」の補正を併用する
ことで、よりタイトなフィット感、シルエットの
オーダージャケットをお楽しみいただけます。
また、あまりアームホールの深い深袖は、腕の運動機能を
損なうことになりますので、身巾に合わせた適正量を
考えながら補正することが大事です。
袖口
ジャケットの袖口は、寸法的にも意匠的にもデザインの
ポイントとなるところになります。
袖口はスーツのなかでも、目に止まりやすい部分なので、
アクセントとしての利用価値、効果が高く、オーダースーツでも
ファッションポイントとしていくつかのオプションがあります。
寸法的なところでは、標準ではジャケットモデルに対して
セットされている袖シルエットの袖口巾や、ひじ巾等を
微調整したり、袖口巾を広げることでフレア気味でエレガント
袖シルエットを作れます。
また、現在の多くのスーツでは、袖釦は開かない「開きみせ」が
標準ですが、釦止めとする「本開き」や、釦を重ねる「キス釦」
切羽や穴かがりを色糸指定のほか、カフス付きとするこだわり度の
高いデザインまで。
ストレートスリーブ
ゆったりめに作られたコートやジャケットに付けられる
直線的なシルエットに裁断された1枚袖のこと。
ボックスラインのスポーティブなコートに
ワンピーススリーブは、動きやすく相性の良い
袖シルエットとなります。
一枚袖は1枚の型紙で作られる袖の作り方で、
ストレートスリーブをはじめ、ゆとりのある
ソフトなシルエットのジャケットなどに用いられる
袖の作り方。
二枚袖は、外袖、内袖(下袖)にわかれる2枚の
パターンで作られる袖で、ほとんどのテーラード
ジャケットはこの袖の作り方で作られています。
シャツスリーブ(シャツ袖)
シャツスリーブは、アンコン仕立てのジャケットにも一部
使われているメンズシャツの袖付けの作り方で、
袖付けの縫い代を身頃側に倒して仕立てられています。
オーダージャケットの一般的な袖付けとなるセット・イン・スリーブに
比べて運動性に優れ、動きやすい作り方で、
シャツ、ブラウスのほか、作業服などで用いられています。
肩パッドがなく、芯地・付属のほとんどを付けないで
仕立てるアンコン仕立ては、軽く羽織る感覚で作られる
ジャケットのため、シャツスリーブとの相性がとても良く、
春夏シーズンのみでなく、秋冬シーズンの厚手なジャケット
にも人気のジャケットモデル。
Pitty Savile Rowのナポリクラシコのジャケットモデルが、
このシャツ袖仕立てのアンコンジャケットになります。
ドルマンスリーブ
身頃からつながった感じの、ゆったりした深袖のこと。 もともとはトルコ人の着た外套ドルマンの袖ににていたところから、この名称が生まれた。夫人のニットウエアに多様されてる。
ラグランスリーブ
肩をつけずに衿ぐりの上から袖ぐりの下までを斜めに切り替えて、そのまま袖としたもの。”肩抜き袖”のこと。クリミア戦争(1853年~1856年)の時、イギリス軍の最高司令官であったラグラン卿(1788~1855年)が、肩を負傷した兵士のために、機能的な袖を考案したことから、この名称が生まれた。トレンチコートといい、ダッフルコートといい、戦争は多くのアイディアを服飾界に与えているものである。
セミラグラン、スプリット・ラグラン・スリーブ、サドル・ラグラン・スリーブなどラグランスリーブにはいくつかのバリエーションがあり、コートだけでなくブルゾンなどにも用いられ応用範囲も広い。
ラグランスリーブは背部分も前身と同様、衿元から脇にかけて斜めに切り替えられているが、前身は通常のスーツスリーブとなっているものが、スプリットラグランと言われるもの。スプリットラグランをセミラグランという場合もある。
※袖ぐり
アームホールとも呼ばれ、衣服の袖のつく部分であり、服のシルエット表現や腕の動きに伴う機能性の上からもA.H寸法の大きさ、くりの形は服作りの上でのキーポイントであり、袖山の形と密接な関係にある。
セミ・ラグラン
一見、普通袖と同じに見えるが、袖山からカフスまで縫い目が通っているのを特徴としたラグラン・スリーブのこと。スプリット・スリーブともいう。
ここにいう、前者のセミ・ラグラン・スリーブは前から見たときには通常のスーツ・スリーブであるセットイン・スリーブだが、後ろから見たときには、ラグランスリーブというもの。
また、ラグランスリーブが衿元から脇下にかけて斜めに切り替えをとる1枚袖なのに対して、肩線の途中から脇下に向かって切り替えをとりラグラン袖のように仕立てられたものもセミ・ラグラン・スリーブという。
どちらかといえば、後者の意味合いで使われることが多い。
セットイン・スリーブ
普通袖のこと。 一般の背広の袖に見られるような身頃と袖を付け合せたタイプの袖。
いわゆるスーツ・スリーブで、山袖と下袖にわけられる2枚袖。この2枚に分割される袖のパーツを筒状として仕立てるのが、一般的なテーラード・ジャケットの袖の作り方となる。これに対して、ラグランスリーブは、1枚袖。衿元から脇下へ斜めに切り替えられ、袖部分となるため、通常のジャケットのような肩巾という概念が少なく、そのため、下に着るものを選ばない。特にビジネススーツなど、肩パッドのあるジャケット着用時のコート用の袖として向いている。
同じコートでも、チェスター・フィールド・コートは2枚袖のセットイン、ラグラン袖のコートはラグランコートと言われる。
スリーブ
シャツ、ジャケット、コートなどの「袖」のこと。 種類としてはセットインラグラン、セミラグラン、スプリットラグラン、ドルマン、キモノ、エポーレット、ドロップショルダー、キャップ、ベル、パフ、パピヨン、ブラウス(ビショップ)、シープレッグ(チキンレッグ)、トランペット、テーパート、フレンチ型などがある。長短による分類については、ハーフスリーブの項参照。
オーダースーツ、テーラードスーツ的にいえば、袖の多くはセットイン、スーツ・スリーブともいわれる山袖、下袖で作られる二枚袖のこと。ほか、コート用の袖としてジャケットを下に着用した場合でも、着心地が楽な1枚袖ラグラン・スリーブ。
袖の種類には、袖付けから袖のシルエットの違いまで、その範囲は広くバリエーションも多い。メンズスーツの場合にも、普通にセットインの作りから、袖先をフレアさせたシルエットで仕立てるヨーロピアン調の袖仕様も標準対応可。
※ドルマン・スリーブ
袖ぐりが深くゆったりしていて、袖口で細くなっている袖のこと。袖付けの縫い目のあるもの、ないもの、まちを入れたものなどがある。ドルマンは、もともとトルコ人の着用する外套の名称で、その袖に似ていることからの名称。
スプリット・ラグラン
ラグランスリーブの変種で、肩の縫い目から前が"セットインスリーブ(普通袖)”、後ろが”ラグランスリーブ”となってる袖のこと。ワンサイドラグランともいう。紳士物のスプリングコートなどによく用いられる。スプリット・ラグランは、スプリット・スリーブとも言われる。
スプリットには分割するという意味があることから、肩線から前身を普通袖、後身が衿ぐりから脇下にかけて斜めの切り替えが入り、肩とひと続きになったラグランスリーブとなっているものを、スプリットラグランと呼ぶ。
ラグランスリーブには、スプリットラグランのほか、肩線の途中から脇下に向けてナナメの切り替えが入るセミラグランのほか、ラグラン・スリーブの肩部分がサドルをかけたように平行になり、やや角張った形をしたサドル・ショルダー・スリーブがある。