織物(ファブリック)
エジンバラ・ツイード
イギリス・スコットランドの古都・エジンバラを集積地とした
ことにも由来する、エジンバラ産のツイード服地のことで、
多くのツイードが3番~5番の紡毛糸を使って織られている
のと同様、同程度の太さの糸を使って織られた平織り地。
タテ糸に白または生成り色の糸、ヨコ糸に色の濃いブラウン、
グレー、グリーン、エンジなどを織り込まれた、クラシックな
雰囲気を楽しめる上品なツイード生地。
コートなどのアウターやジャケット、パンツ、スカートや、
帽子などの小物類にも向いています。
このほかツイード生地には、スコットランド北西に位置する、
アウター・ヘブリディーズ群島で作られる「ハリスツイード」や、
アイルランド・ドニゴール地方で織られる「ドニゴールツイード」
が有名です。
ウール・ジョーゼット
生地表にざらっとした凹凸のある生地感を、
タテ糸とヨコ糸とも強撚糸を使用し、糸の撚りを
右撚りとする「S撚り」、左撚りとする「Z撚り」を
交互に打ち込むことで織り出されたジョーゼット風の梳毛地のこと。
ウール・ジョーゼットを製織するときに用いられる
クレープ織りは、強撚糸をタテ・ヨコ両方または、どちらか
片方のみに使用し、表面にしぼを出した織物を総称する
ものになりますが、ジョーゼットはこの両方、
日本の「縮緬」は、この片方に無撚糸を使い製織された
織物。
現在、両者は同じ意味で用いられることが多くなっています。
アイリッシュ・ポプリン
アイルランド産のアイリッシュリネンやコットンで
作られた比較的薄手なシャツ用素材のことを、
現在ではいわれることが多くなりましたが、
本来は、タテ糸にシルク、ヨコ糸に梳毛糸(ウーステッド)を
使ったポプリンのことで、シルク独特の光沢感と、
ウールのしなやかさを兼ね備えた織物。
このアイリッシュ・ポプリンを使用した、伝統的な
ブリティッシュスタイルに欠かせないレジメンタルタイは、
英国・ATKISONS社の代表的なアイテムのひとつ。
ポプリンは英語での呼び方で、アメリカでは
ブロードクロスが同じものになります。
ツイードヤーン
ハリスツイードやドネガルツイードを製織するのに
用いられる紡毛糸のこと。
ツイードヤーンは、本来スコットランドやイギリスで
飼育されていた、毛が太く硬いチェビオット種の、
羊毛を原料とした手紡ぎの糸で、これを毛染めした
紡毛糸を使用し手織りされたツイード生地は、ざっくりと
して粗く、野趣ある風合いが特徴的。
防寒用の作業着として根付いたツイード生地は、
とても暖かく、アウターとしての丈夫さ、耐久性にも
とても優れた毛織物です。
現在では毛の状態で染色され混織されることでメランジ調に見える
「ばら毛染め」をされた紡毛糸や、糸の状態で染色された、
太番手のツイード調の紡毛糸を総称して、ツイードヤーンと呼んでいます。
撚り糸
紡績されただけの状態の「単糸」、これら「単糸」を
2本撚り合わせて作られる「双糸(2PLY)」には、
それぞれ繊維を収束して紡績される段階で「撚り」が
かけられており、「単糸」には左撚りにかけられる
「Z撚り」が、「双糸」には逆の右撚りにかけられる、
「S撚り」が一般的。
この撚りのかけ具合は、糸の光沢感や、強さ、風合いを
決める大事な作業のひとつで、短繊維では1インチの
間で21回以上、長繊維は1mの間で、2000~4000回
の撚りをかけられたものを「強撚糸」と呼び、
特に生地が薄くなる夏服の場合には、シワになりづらいなど、
優れた特徴をもつために、良い状態にスーツを保つ使いやすい
服地となっています。
反対に、ゆるく撚りを掛けられた糸は「甘撚り糸」。
双糸
ウールやコットンなどの繊維を紡績し作り出された
1本の糸を「単糸」といい、この「単糸」を2本撚り
合わせることで、作られる糸のこと。
「双糸」は、2本の糸を撚り合わせて作られるために、
一般に細い糸2本が使用され、「単糸」に比べると、
織り上げられたときの生地感もなめらかで光沢があり、
丈夫な生地に仕上がります。
また、精紡された「単糸」に若干ある太さのムラも、
2本を撚り合わせることで、より均一化した糸を
作り出すことができるのも特徴のひとつ。
「単糸」を使用した素材がソフトな仕上がり感の
生地になるのに対して、「双糸」は耐久性があり、
適度な光沢感をもつビジネススーツにより適した糸。
「双糸」は、別名「二子糸(ふたこいと)」「諸糸(もろいと)」
「諸撚り糸」「2PLY」などと呼ばれます。
純糸
ウール100%や、コットン100%などを製織する際に
用いられる、同じ種類の原料を使用して作られた糸のことで、
他の原料を混紡しないピュアウールや、ピュアコットンのこと。
純毛糸、純綿糸。
オーダージャケットやスラックスを仕立てる際に使われる、
オールウール、コットン、リネンなどといった天然素材100%
の生地は、商品価値が高く、自然な風合いを最大限に活かすことができる
その仕立て上がりの良さは、ご愛好者もとても多いオーダー素材。
また、コットンやリネンの涼しさ、快適さにウールを混紡することで、
しなやかさを加えたり、スパンデックスなどを混紡しストレッチ性を
加えるなど、それぞれの良いところちょうど良い配分で生かした、
ブレンド素材は、混紡糸、混織糸といったものから作られます。
アメリカンコットン
アメリカは、全世界で年間2500万トン生産される
綿花のうちおよそ380万トンを占める、中国に次ぐ、
世界第2位の綿花生産国。
現在アメリカで主に生産されているアプランドコットンは、
メキシコなど中南米地域に生息していた野生種の綿花を、
アメリカが品種改良したもので、栽培しやすく、その品質の
高さから、現在、全世界の綿花生産量の90%を占める綿花品種。
アプランドコットン(upland cotton)の名前は、アメリカの
高地・内陸部で、生産されたことに由来します。
このアプランドコットンのほか、エジプト綿や海島綿のような
繊維の長い超長綿も作られており、アメリカで作られたこの
超長綿はスーピマコットンの名前で知られています。
アメリカンコットンは、アメリカで生産されたコットンの総称。
日本の綿花輸入量6万トンのうち、およそ半分が、
このアメリカ産の綿花となっています。
甘撚り糸
スーツやジャケットなどの衣服を作る際に使われる糸には、
一般に1インチの長さの間に18~21回の撚りをかけて
作られるのですが、その糸の使用目的によって、この撚りの
回数には変化を持たせることがあり、「甘撚り糸」は、
この撚りの回数を18回以下に抑えられた、撚りの甘い糸のこと。
この撚りの回数は、糸の強さや、光沢感、耐久性、固さ、結束性
に変化をもたらし、夏のスーツ地などによくみられる「強撚糸」は、
「甘撚り糸」とは逆に、21回以上の強い撚りをかけて作られたもの。
「甘撚り糸」を使用して作られた衣服は、多くの場合柔らかい感じの
衣服になり、「強撚糸」を使用したものは、薄手の夏服地とした場合にも、
シワになりづらいなど、固めの服地に仕上がります。
検反
オーダースーツで使用される生地を含め、衣服用生地の
数量は、1反、2反で数えられるように「反物」と、
呼ばれることから、この「反物」が規格通りの
生地巾に仕上がっているか、また織りむら、織りキズ、
染めむら(総称してピリング)などがないかどうかを
確認する作業のことを、「検反」といいます。
多くの生地を製織する生地メーカー(ミル)にとって、
ごく一部の生地の中に、織りキズ等の不具合が生じてしまうことは
どうしても避けることが難しいため、このような
織りキズ等のある場所には、検反時に必ず「とんぼ」と
呼ばれるマークが施されることになります。
ミル
オーダースーツや、プレタスーツに服地を提供して
くれる生地ブランドのことを「ミル」といったり、
「マーチャント」といったりして混同して使っていることが
多いと思うのですが、この「ミル」が毛織物工場のことを
指すのに対して、「マーチャント」は生地売り商人のこと。
毛織物工場(ミル)が生地を売っていたり、「マーチャント」が
事業の一部として毛織物工場を運営したりしているので、
厳密に区別することが難しい生地ブランドも多くあります。
イタリアの生地ブランドの名前にも見られるラニフィーチョ
(Lanificio)がこの「ミル」と同じ毛織物工場のことで、
ラニフィーチョ・デ・トレーニョなど。
ファブリック・マニュファクチャー、テキスタイル・
コンバーターと言われることもあります。
イタリアを代表する世界的な生地メーカーとして有名なカノニコや、
エルメネジルドゼニアをはじめ、エドウィンウッドハウス、
レダ、ハリスツイードなどがこの毛織物工場を主体とする
ミル系生地ブランドになります。
マーチャント
商人の意味をもつ「マーチャント」は、オーダースーツで
使われる服飾用語の中では「毛織物商社」のこと。
日本では「生地問屋」と言われているのが「マーチャント」に
なります。
よく混同されがちな「ミル」ですが、これは「毛織物工場」の
ことなので、「商う人」と、「製造する人」といったほどの違いが
ありますが、「マーチャント」が毛織物工場を所有し生地を織ったり、
また「ミル」が織った生地を直販したりなど、その分類は微妙に
難しいところもあります。
日本ではこのミル系の服地ブランドがほとんどで、「御幸毛織」や
「長大毛織」はその代表的なもの。また、イタリアのカノニコも
このミル系の服地ブランドに分類されます。
世界的なマーチャントとしては、ホーランド&シェリーや、
ハリソンズ・オブ・エジンバラ、ドーメルなどがあげられます。
ベビーフランネル
フランネルの中でも、薄手で柔らかな種類のものをいい、
赤ちゃんの産着に用いられるところから、この名前があります。
本来フラノは紡毛で織られており、布地は厚く、織り目が
見えないほど縮絨された毛羽立ち感をもつものですが、
Super100’sなどの細糸で織られたいわゆる梳毛フラノと
いわれるものは、素材をラムウールに求めたり、
原毛品質そのものの良さなどから、ベビーフランネルに
類する優しい着心地感。
Pitty Savile Rowのご掲載生地のなかでは、
オルメザーノフラノ、カノニコフラノ、御幸毛織にも
優しい肌触りのフラノ素材をご用意。
フラノジャケット、スラックス、スーツなど
ご希望アイテムをオーダーしていただけます。
ミルド仕上げ
ミルド仕上げのミルドはマイルドのこと。
梳毛織物(ウーステッド)に対して、縮絨をほどこし、
毛羽感を出したあと、剪毛し圧絨を行うことで、
布地表面に織り目が見える程度の短い毛羽を持たせる
織物仕上げのこと。
起毛は行わないところに特徴があります。
ミルド仕上げをした織物をミルドウーステッドといい、
紳士服のスーツ地に多く用いられます。
目付け
スーツ生地などの織物を1平方メートルあたりの重さで表示する
もので、g/㎡などの単位で表現されるもの。
また、生地巾は関係なく、その織物1m分の重さで表示される
場合もあります。
オーダースーツにおいては、自分がスーツを仕立てる際の目安に
することが多く、「このリネンは220g/㎡だから薄手」「この
ハリスツイード、ドネガルツイードは450g/㎡あるので、厚地で暖かそうなど」
ただ、薄地でも打ち込みが良く目詰まりがしっかりしているもの
などは薄手でも重かったり、繊維そのもの重量などもあり、
目安としてお考えいただくと良いと思います。
海外の生地ブランドでは1ヤードあたりの重さをオンスや、ポンドで
表示していたり、日本の和服の場合には匁付けなどといいます。
刺し子
キルティングに似た感じの両面刺しの、日本的な厚地。 剣道着や火消しの服装によく見られる。日本の庶民的な素材として、国際的ファッションショウにもよく出品され注目を集めている。
ミクスチュア
「混合」を意味する。 2色以上の色糸をまぜ織りにすることなどを意味する。またその外観をさす。ヘザーミクスチュア。
カバート
霜降り調の綾織地、また繻子(しゅす)織りのこともある。 コート用に多く使われる。ウィップコード。